ここでは司法書士試験の試験科目別に、その出題内容や注意点、また傾向と対策を概説していきます。
民法
民法は、司法書士試験の科目の中でも、最も出題数が多く、また他の法律を理解するためのベースとなる科目なので、学習のスタートとともに手をつけるべき重要分野です。
民法の学習の内容は以下の通りです。
- 総則
- 物件総論
- 所有権
- 用益物権
- 担保物権
- 債権総論
- 債権各論
- 親族法
- 相続法
民法は基礎的な知識だけではなく、応用力が問われる出題が多いため、テキスト・過去問に加え、過去に出題されている判例の理解や、条文の暗記まで、まんべんなく学習する必要があります。
また、不動産登記法や不動産登記の書式との関連も深く、司法書士試験の学習の基礎となる科目でもあります。
不動産登記法
不動産登記法の学習内容は以下の通りです。
- 不動産登記法
- 登記事項・登記の種類
- 登記申請行為
- 添付情報
- 所有権に関する登記(保存・移転等)
- 抵当権に関する登記
- 根抵当権に関する登記
- 先取特権・質権に関する登記
- 用益権の登記
- 仮登記
- 処分禁止の仮処分の登記
- 信託の登記
- 工場財団に関する登記
- 不服申立て
- 登録免許税
不動登記法の学習は、不動産登記の手続きについての一定の方式の学習です。
民法と違い、基本的には暗記型の学習で対応し易い科目ですが、その分学習に単調さを感じて、心が折れてしまい易い科目でもあります。
学習の順序としては民法の学習後、最初に取りかかるべき科目となりますので、 学習序盤の山場と考え、モチベーションの維持を心がけましょう。
学習内容としては、不動産登記法では条文の理解に加え「先例」が重要となります。
「先例」とは法務省による法律の取り扱いについての通達・回答・依命通知などのことで、いわば実務における法務省の見解になります。
司法書士としての実務に深く関わる部分であり、例年相当数の出題があります。
商法・会社法
商法・会社法の学習内容は以下の通りです。
- 商法総則
- 商行為
- 設立(株式会社)
- 株式・株主
- 新株予約権
- 機関
- 計算
- 組織の再編
- 持分会社
会社法では、会社という組織の活動と、その活動が会社や第三者に及ぼす影響を学習します。
日々の経済ニュースで学習内容が出てくることも多く、また、自分の会社に置き換えて学習を進めることで、具体的なイメージを持ちやすい科目です。
他の科目との関係では、商業登記法との関連が強い科目でもあります。
商業登記法
商法・会社法の学習内容は以下の通りです。
- 総論
- 登記申請手続
- 商号の登記
- 未成年者・後見人
- 支配人
- 株式会社の登記
- 持分会社の登記
- その他の法人登記
- 登録免許税
会社が活動した履歴を、第三者にわかるように残すことで(登記)、取引を円滑に行うための法律の学習となります。
民事訴訟法・民事執行法・民事保全法
この3科目の出題数は以下の通りです。
- 民事訴訟法 5問
- 民事執行法 1問
- 民事保全法 1問
したがって当然に力を入れるべきは民事訴訟法です。
民事訴訟法の学習内容は以下の通りです。
- 民事訴訟法総論
- 民事訴訟法の主体
- 訴えの提起
- 審理
- 訴訟の終了
- 複雑な訴訟形態
- 上訴
- 簡易裁判所による手続き
司法書士試験における民事訴訟法の問題は、判例や学説について問われることは少なく、条文を知っているかどうかで正答を導き出せるものが中心です。
よって、法学部などで民事訴訟法の学習経験がある方でも、先入観を捨てて条文中心の学習を行いましょう。
民事執行法の学習内容は以下の通りです。
- 民事執行法総論
- 債務名義
- 執行文
- 執行の開始
- 不動産執行
- 動産執行
- 債権執行
民事執行法は強制執行(特に不動産執行)の出題が多く、不服申立てについても数年に一度出題されます。
民事保全法の学習内容は以下の通りです。
- 民事保全手続きの種類(仮差押え・仮処分)
- 保全命令
- 保全執行
- 仮処分の効力
- 保全意義
民事保全法は保全命令手続、不服申立てからの出題が中心で、条文そのものの知識が問われることが多くなっています。
名誉棄損の出版物への出版差止めの仮処分や、不等解雇に対する地位確認の仮処分申立てなど、ニュースなどで耳にする機会も多いでしょう。
憲法
憲法の学習内容は以下の通りです。
- 憲法総論
- 人権
- 統治機構
- 財政その他
- 憲法改正
憲法は全文の103条の条文しかないため、その条文を覚えるのは当然として、学説の対立や重要判例についての出題が多いため、問題を解くためにはそちらもしっかりと学習しておく必要があります。
刑法
刑法の学習内容は以下の通りです。
- 犯罪の成立要件(構成要件該当性・違法性・責任)
- 共犯
- 刑事罰と罪数論
- 国家的法益
- 社会的法益
- 個人的法益
刑法の学習は司法書士試験の科目の中では、一番身近に感じられ面白い科目かもしれません。
出題のほとんどは判例の結論を問う問題で、「○○の場合にはA には詐欺罪が成立する。」などの結論が正しいか正しくないかを問うような形式です。
供託法
供託法の学習内容は以下の通りです。
- 供託制度(供託の種類等)
- 供託当時者
- 供託申請手続
- 供託物払渡手続
- 弁済供託
- 執行供託
供託法の学習は司法書士試験の学習の総まとめ的な内容であり、多くの科目との関連があります。
そのため、他の民事手続を学習した後に、最後に学習すべき科目といえます。
司法書士法
司法書士法の学習内容は以下の通りです。
- 司法書士制度
- 登録
- 義務
- 懲戒
- 司法書士会・日本司法書士会連合会
司法書士法は、これまでの科目と異なり、他の科目との関連はほとんどありません。
司法書士の職務内容や、やってはいけないことなどを定めた法律で、学習の進め方もテキストと条文を読み込むのみで問題ないでしょう。
書式
書式問題は、いわゆる記述式の形式で、登記所に登記を申請する際の「登記申請書」の書き方についての知識を問う科目です。
商業登記法と不動産登記法から1問ずつの出題で、難易度が高く、司法書士試験の合否を左右する科目といえます。
択一式問題のように選択肢の中から正答を選べば良いというわけではないため、「実際に書いて練習する」という訓練を積むことが必要になる科目になります。